子供のころの七夕の記憶といっても、なにやら願い事を書いた短冊を笹竹に結びつけたかな、といった非常にぼんやりとしたものでしかない。
五節句のひとつとはいえ、大人になってからはすっかり意識のすみに追いやられて、織姫と彦星の名前を口にすることもなくなり、いつしか夜空を仰ぎ見ることさえしなくなっていたと、いまさらのように気づいた…。
棚機(たなばた)神社
「棚機神社ってどこにあるの。はじめて聞く名前だ」
そんな風にたずねるヒトには、南阪奈道路の側道沿い、葛城インターチェンジのすぐそば、と言えばわかってもらえるのだろうか。それとも道の駅・葛城の裏手あたり、と説明するほうが適当だろうか。
奈良県葛城市太田の棚機神社に詣でると、御由緒を記された説明版が目にはいった。
五世紀、この地に大陸から最新の織機「棚機」とともに「牽牛と織女の七夕の物語」や機織り技術の向上を願う棚機の儀式が伝えられた。
そして、織物の専門集団である倭文氏 (しどりし) の祖神をまつる「葛木倭文坐天羽雷命神社・かづらきしどりにいますあめのはづちのみことじんじゃ」が創建されたと言い伝えられているが、葛城市加守に遷座された後は、天羽雷命と対になる天棚機姫神 (あめのたなばたひめのかみ) を村人が細々と、石祠にまつってきた。
現在では「棚機神社保存会」のもと、境内は常に掃き清められ、古来よりの伝統祭祀も欠かさず執り行われている…と。
織姫の星に願いを
きょうは七夕。日本晴。
織姫と彦星のふたりがどうか会えますように。
青(緑)・赤・黄・白・黒(紫)の五色の短冊に願い事を書こうか。
そして夜空にひかる織姫の星に祈る。